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投稿日: 2024.04.24 18:01

ロバンペラの“無慈悲な幅寄せ”を実現させた高度な技術。約1600馬力を路面に伝えるグリップ力もカギに

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国内レース他 | ロバンペラの“無慈悲な幅寄せ”を実現させた高度な技術。約1600馬力を路面に伝えるグリップ力もカギに

 2023年、WRC(世界ラリー選手権)2年連続王者のカッレ・ロバンペラは、フォーミュラ・ドリフト・ジャパン(FDJ)に初めてスポット出場。いきなり優勝を飾り、ライバルとドリフトファンを驚かせた。

 結果もさることながら、高速かつ高精度なマシンコントロールと、後追いでの“無慈悲な幅寄せ”は黒船来襲レベルのショック。日本のドリフト界に大きな衝撃を与えた。ラリー仕込みのドライビングスタイルは他の日本人ドライバーたちと大きく異なり、以降、ライバルたちはロバンペラのドライビングを少しでも取り入れようと研究および鍛練を重ねていったと聞く。

 そのロバンペラが、再びレッドブルGRカローラを駆りFDJに出場。4月6〜7日、富士スピードウェイで行なわれた開幕戦に姿を現した。そこで、ラリーとドリフトのドライビングの違いおよび共通点について、彼に訊ねてみた。

■「ドリフトはスライドさせることが最重要」という誤解

「やはり、ラリーとドリフトではドライビングは大きく異なる。そもそも僕たちがWRCで乗っているクルマは4WDで、ドリフトカーはFRだからね」とロバンペラ。

「WRCでは基本的にできるだけタイヤをスライドさせないように走るけれど、ドリフトではスライドさせて角度をつけなければならない。それも得点の対象となるからね。それでも、クルマをコントロールするための技術には共通点が多くある。左足ブレーキやハンドブレーキを使ってマシンの姿勢を微調整するのは同じだし、ドリフトでも速さが求められるから」

カッレ・ロバンペラ
2024年FDJ第1戦に参戦したカッレ・ロバンペラ

 ライバルが驚いたのは、左足ブレーキの使い方のうまさだという。右足でアクセルを開けた状態で、左足でブレーキを踏むことによりドリフト中のクルマの前後荷重バランスを微妙にコントロール。ラリーでは、雪道など滑りやすい路面や、グリップが安定しない路面で多く使われるテクニックだ。ドリフトにおいては、後追いで前のクルマの姿勢に合わせる際にも効果があり、無慈悲な幅寄せ中にもブレーキランプが何度か点滅することが多い。

 日本のドリフト界では、これまでどちらかというと角度が重視されていた。しかし、アメリカやヨーロッパのFD(フォーミュラドリフト)では、充分なドリフトアングルを保ったまま、長いコーナーを速いスピードで正確に駆け抜ける走りが評価される。ロバンペラのドリフトはまさにそのスタイルであり、ヨコハマの『ADVAN NEOVA AD09』が持つグリップ性能をフルに引き出した上でのスライドは、とにかくスピードが際立つ。

「これまで、FDJは常にヨコハマタイヤで戦ってきた。絶対的なグリップもさることながら、非常に扱いやすいタイヤで、僕が実践しているスムーズなドライビングにも合っていると思う」とロバンペラ。

 本場アメリカのFDでは、タイヤのマネジメントも勝負を決める大きなポイント。1回のアタックでタイヤのパフォーマンスをフルに引き出すために、チームのエンジニアは緻密な計算とセットアップを行なう。GTの最高峰レースやトップフォーミュラと変わらぬ、高いエンジニアリング能力が求められるカテゴリーなのだ。

「ドリフトといえばタイヤをスライドさせることが何よりも重要で、グリップ性能はあまり必要ではないと思う人も多いかもしれない。しかし実際はまったくそうではなく、非常に高いグリップ性能が求められる。僕たちは可能な限り速いクルマに仕上げようとしているし、パワーもできるだけ上げたい。そして、ビッグパワーを路面に伝えるためには、とにかく高いグリップ性能とトラクションが必要なんだ」

2024フォーミュラ・ドリフト・ジャパン第1戦富士
横浜ゴムの『ADVAN NEOVA AD09』を装着してFDJに参戦するカッレ・ロバンペラ車

■タイヤのコントロール性が『思い切りの良さ』に直結

 ラリーの名門、クスコ/キャロッセが製作するロバンペラのレッドブルGRカローラは、HKSのパーツを使用してフルチューンした直列6気筒の2JZ-GTEエンジンを搭載する。排気量は3Lから3.4Lに拡大され、ドラッグレースにも対応できるタービンの装着により約1000馬力を発生する。

 さらに、今回の富士戦ではターボラグの解消やスロットルレスポンスの向上を目的に、ドラッグレースの定番であるNOS(亜酸化窒素)をエンジン内に噴射。最高約1600馬力(!)を発生する、モンスター級のパワーユニットに進化していた。

 2台同時走行の決勝トーナメントでは、先行でも、後追いでもスタートダッシュがとても重要になる。直後の直線区間ではゼロヨンマシン的なパワーと、それを路面に伝えるトラクション性能の高さが求められ、そこで遅れをとるとコーナーでの挽回は難しい。

「昨年出場したエビスや岡山と比べると、富士はかなりハイスピードで、よりトラクションが重要なコースだった。ブレーキングで距離を詰めたりするチャンスがあまりないので、クルマ自体の前後重量バランスなどによる後輪のトラクションがカギを握るんだ。富士に関してはフロントがやや重くリヤが軽い僕たちのクルマは、あまりコースの特性に合っていなかったようだ」とロバンペラ。残念ながら、富士ではトップ8入りを逃す結果になってしまった。

「昨年の最終戦岡山のように、雨の中での戦いになることもあるから、ウエット路面でのグリップやコントロール性も実はかなり重要になる。その点、ヨコハマはコントロールがしやすく雨の中でも思い切り走ることができた。決勝でスピンをしたのは、カウンターステアの切れ角が少し足りなかったからで、富士に向けてはGRカローラの前輪の切れ角を増やして対策し、雨のテスト走行では効果が確認できていた。もっとも、本戦はドライコンディションになったけどね」

 クルマのわずかなバランスの違いが、コースによってプラスにもマイナスにも作用する。WRC2年連続王者であっても簡単には勝てる世界ではない。FDJは、高いドライビングスキルと、非常にデリケートなセットアップが求められる、リアルコンペティティションなのだ。

2024フォーミュラ・ドリフト・ジャパン第1戦富士
レッドブルGRカローラでFDJ第1戦富士に出場したカッレ・ロバンペラ。


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