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スーパーGT ニュース

投稿日: 2023.06.15 16:16
更新日: 2023.06.15 16:17

apr GR86 GT 2023スーパーGT第3戦鈴鹿 レースレポート

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スーパーGT | apr GR86 GT 2023スーパーGT第3戦鈴鹿 レースレポート

2023 AUTOBACS SUPER GT ROUND 3
開催地:鈴鹿サーキット(三重県)/5.807km
6月3日(予選)
天候:晴れ コースコンディション:ドライ 観客数:1万1000人
6月4日(決勝)
天候:晴れ コースコンディション:ドライ 観客数:2万2000人

ピンチをチャンスに。攻めのピットスタートから9位へ! 波乱のレースを乗り越える

 絶えず激しいバトルが繰り広げられる、スーパーGT第3戦の舞台は、国内でも屈指のテクカルコースとして知られる、鈴鹿サーキットである。今年もaprは2台体制で臨み、トヨタGR86を30号車として走らせる。投入から2シーズン目となるapr GR86 GTは、ドライバーに永井宏明選手、織戸学選手、上村優太選手、小河諒選手の4名を登録。前回に続いて450kmレースということで、今回は永井選手と織戸選手、そして上村選手の3人で戦う。使用するタイヤは信頼のヨコハマである。

 ここまでの2戦はいずれも予選で苦戦を強いられており、第1戦の岡山国際サーキットでは悪天候に、そして第2戦の富士スピードウェイではマシンのトラブルによって、Q1をクリアできず。決勝では確実に順位を上げてきているだけに、今回のテーマはQ2進出。これがかなえば、きっと今季初の入賞も可能なはず。第3戦とあって、ライバルの多くがサクセスウエイトを積んでいるなか、軽さを武器として雪辱を果たして欲しいところだ。

公式練習 6月3日(土)9:10〜10:45

 第2戦が終わったばかりの5月8〜9日に、GTEがGT300クラスのテストを鈴鹿で行い、2日目午前のセッションでは1分58秒164で4番手、午後のセッションでは1分58秒498で2番手と、好結果を残していたapr GR86 GT。時間をかけてセットが詰められたことで、ドライコンディションには確かな手応えを得ていた。

 とはいえ、台風接近の影響を受け、土曜日の鈴鹿サーキットは、雨に見舞われることを、誰もがいったんは覚悟したはずだ。実際、搬入などが行われた金曜日は、サポートレースすべて走行がキャンセルされたほどだったが、台風は駆け足で太平洋上を通過していったことで、一転して土曜日は早朝から好天に恵まれることになった。早朝の路面は一部にウエットパッチを残していたが、直前のFIA-F4予選でしっかり清掃してくれたこともあり、公式練習にapr GR86 GTはコースオープンと同時に走り出す。

 普段なら、最初に乗り込むのは織戸選手ながら、今回は上村選手から。鈴鹿での豊富な経験、そして若さあふれる走りを高く評価しての起用だ。まず予選セットが試され、上村選手は1分58秒457をマーク。これがセッションベストとなり、“当たり”となった。

 続いて決勝セットが試され、織戸選手、永井選手の順でドライブ。織戸選手の周回は短かったものの、そのなかで1分59秒118を記して、確かな手応えを得られたことから、永井選手の周回に残りの時間を充てることに。その間にセット変更も入念に行われたため、永井選手のタイムは2分0秒932がベストだったが、安定感を確認できたのは、何よりの収穫に。なお、公式練習の順位は16番手となった。

公式予選Q1 6月3日(土)15:25〜15:35

 今回、A組でQ1に臨むapr GR86 GTは、最初のアタッカーに上村選手を起用。公式練習のスピードが、より評価を高めたからだ。しかし、上村選手が走った公式練習の序盤と、予選とでは著しくコンディションが変化。気温こそ2度しか違わぬ25度だったが、路面温度が14度も上がって、40度にも達していた。加えてGT500クラスの車両が使用するカーボンニュートラル燃料が、何やら悪さをしたよう。いずれにせよ、GT初予選の上村選手には、厳しい状況となっていた。

 入念にウォームアップを行って、計測3周目から2周に渡って攻め込んだ上村選手ではあったが、フロントのグリップ不足によって、1分59秒168、1分58秒892を出すに留まり、13番手となってQ2で待つ織戸選手にバトンをつなぐことはできなかった。

永井宏明選手

「路面グリップが悪くなっちゃったようですね。決勝は地元なので、応援もたくさんあると思いますし、皆様の応援の力を借りながら、上位へ少しずつでも、順位を上げていけばと思います。地元なので、今年いちばんの応援団が来てくれていますので決勝は全力尽くします」

織戸学選手

「路面が公式練習の中盤ぐらいから500のCN燃料の影響か、ニュルニュルでグリップしなくなってきて。Q1のA組はヨコハマ勢がけっこう沈んでいるんだよね。ヨコハマのゴムと路面状態が合わなかったのかも。前回のテストのフィーリングが良かったので、そのときに戻したんだけど、ダメだったね。まったくグリップしないと言っていた。ここまで遅いとびっくり。せっかく上村に行かせたんだけど、ちょっと残念。本人がいちばん残念だと思うけど」

上村優太選手

「初のGTの予選なので、行かせてもらえたことは、すごく嬉しかったです。あまり納得のいく走りではありませんでしたが、GTの予選の雰囲気は独特なので、他のレースとは違って。僕にとっては、いい経験になりました。路面状態の悪さだけは読めなくて、まわりも条件は一緒なので、単純にもうちょっとセットを詰めていれば……。この経験を活かして、また予選できるチャンスがあったら、頑張ってみたいと思いますし、明日の決勝レースは後方からの追い上げになりますけど、3人で一生懸命頑張りたいと思います」

金曽裕人監督

「セットアップを思うように進められませんでした。路面状況の変化を読めていなかった。上村選手のアタックのときは、ヨコハマタイヤの一番おいしいタイミングに全開で行けてなかったので、メリハリなく終わってしまいました。前回の31号車の根本選手みたいに、『若い子には旅をさせよ』でしたが、ちょっとそれがうまくまとめきれず旅の途中となりました。でも明日は、長いレースで3人とも得意の鈴鹿なので入賞はできると思います。去年も23番手から3位まで上がってきた実績もあるので、決勝でのジャンプアップに期待してください」

2023スーパーGT第3戦鈴鹿 永井宏明/織戸学/上村優太(apr GR86 GT)
2023スーパーGT第3戦鈴鹿 永井宏明/織戸学/上村優太(apr GR86 GT)

決勝レース(77周) 6月4日(日)13:30〜

 前回に続いて天候に恵まれ、決勝当日の気温は30度にまで上がり、まさに夏日に。路面温度も47度まで高まっていた。ウォームアップは上村選手から走り始め、チェックだけ行って、すぐにピットイン。その後はチェッカーまで永井選手が走り続け、最後の周に2分1秒560を記録して、最終確認を完了させていた。

 本来ならば25番手からスタートのapr GR86 GTだが、大胆な作戦に討って出る。ハードタイヤに交換し、ピットスタートとしたのだ。その時こそ訪れた大応援団はざわめくも、後の展開を思えば、「そうか、なるほどな!」となったに違いない。

 最初にドライブした永井選手は、スタート直後のトラフィックによるストレスから解放されたこともあり、予選並みに全力で走り出せた様子。さらに言えば、義務づけられた2回の給油のうち1回を、1周目もしくは2周目に行ったチームもあったことから、最下位を走行するのも免れていた。ホイールを脱落させ、ストップした車両を回収するため、8周目から12周目までセーフティカー(SC)が導入され、先導終了後にはピットに入るチームが相次いだことから、永井選手は一気に9番手にまで上昇。少なくてもピットスタートによる遅れは、完全に帳消しとなっていた。

 15周目、上村選手に交代。この間にいったん順位を落とすも、最初のピットを遅らせたチームが戻るたび順位を戻し、31周目には10番手に。35周目には、9番手に浮上する。そして38周目からチェッカーまでは、織戸選手の担当だ。全チーム、最後のピットを終えるとapr GR86 GTは10番手につけていた。もちろん織戸選手がそれに満足するはずがない。前をいくライバルとの差を徐々に詰め、54周目の130R立ち上がりで並んで前に出た、その瞬間……。左側から抜いて行こうとしたGT500クラスの車両の右リヤが、apr GR86 GTの左フロントに接触! 今まさに抜かんとしていた、ライバル車両とサンドイッチ状態になってしまう。織戸選手は幸運にも、その場をすり抜けられたものの、他の2台は大クラッシュ。GT500車両は宙を舞ったほど……。

 即座にSCが導入され、間もなく赤旗に変更。「ドライバーに意識あり」がアナウンスされた後、やがてレース終了の発表が。apr GR86 GTは9位となり、今季初入賞。ピットスタートというピンチをチャンスに変えていた。シリーズ第4戦は8月5〜6日に、富士スピードウェイで開催される。この勢いを中盤戦にも!

永井宏明選手

「予選では、うまくクルマを仕上げられませんでしたが、決勝向けのセットは決めることができたので、いいペースでみんな走ることができました。チェッカーまで戦えることができたら、まだ順位も上がりいいレースになったと思うと、不完全燃焼感がないわけではないですが、クラッシュしたGT500のドライバーが無事でなによりです。次の富士も、いいレースができるように頑張ります」

織戸学選手

「87号車を抜こうとしたとき、左側のスペースは空いていたので普通のバトル中でしたが、ちょっと挟まっちゃった。GT500との間に挟まった瞬間に予想しないクラッシュが発生しましたが、双方のドライバーが無事で安堵しています。非常にいいペースだったので、『残りのためにタイヤは取っておいて』というときだったので、残念は残念ですし、不完全燃焼ですけど、決勝に向けてはチームがいい作戦を立ててくれ、ヨコハマタイヤも良くて、満足のレースでした」

上村優太選手

「本当に序盤から気持ちよく順位を上げられたので、これからというところ、あと20周残っていましたけど、これから最後の展開が楽しみだな、というタイミングで大きなクラッシュが起きてしまいました。非常にチームとして、クルマとしても、いいパフォーマンスを出せて走れたので、良かったと思います。もっと上位に行けるはずだったので不完全燃焼ですが、次の鈴鹿も楽しみになりました」

金曽裕人監督

「ピットスタートにしてタイヤをハードに換えて、作戦大成功! みんなのタイヤがタレるところ、淡々と走れたというのは、やっぱりエンジニアの能力、ドライバーのパフォーマンスがしっかりしていました。最高のパフォーマンスで9位。かなりミラクル18台抜き、良かったです、さすがです! ただ、最後まで続いていたら、あと3ポジションは上に行けたかもしれません。マシンのダメージはそれほどでもなく、両側から挟まれただけなので、外装はボロボロになっていますが、シャシや足回りなどは大丈夫。今日は、結果もですがクラッシュしたドライバーが無事で良かったです。次の富士も期待できそうです」

2023スーパーGT第3戦鈴鹿 apr GR86 GT(永井宏明/織戸学/上村優太)
2023スーパーGT第3戦鈴鹿 apr GR86 GT(永井宏明/織戸学/上村優太)


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