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特集

投稿日: 2020.12.07 19:00
更新日: 2020.12.07 19:16

モータースポーツ基礎用語


F1 | モータースポーツ基礎用語

これだけ知っていれば、もう戸惑うことなし/F1基礎用語辞典(1)

オートスポーツWEBやF1中継でよく目に&耳にする用語を総括。「あいうえお」順の辞典形式でまとめた。

アウトラップ/インラップ

ピットからコースに入った周がアウトラップ、コースからピットに戻る周がインラップ。

アピール

レース競技委員会などが下したペナルティなどの決定を不服とし、チームが主体となって「抗議」すること。目立つために派手な動きをすることではない。

アンダーカット/オーバーカット

レースで競り合っている際、順位を争う相手より先にタイヤ交換を行って相手の前に出る作戦を「アンダーカット」、後ろを走っている車両が相手より後にタイヤ交換を行ってポジションを逆転する作戦を「オーバーカット」と呼ぶ。アンダーカットは、タイヤ交換後のラップタイムが相手より速い場合に可能。タイヤを履き替えた方が速く走れる場合や、相手がトラフィックに引っかかっている場合などで成立しやすい。オーバーカットはコースに留まった方が、タイヤ交換を行った相手より速い場合に可能。相手が履き替えたタイヤが初期の性能を発揮するのに時間がかかる場合に成立しやすい。

アンダーステア/オーバーステア

リヤはグリップしているのにフロントタイヤが限界に達してグリップ力を発揮せず、ステアリングを切り込んでも曲がらず旋回外側にふくらんでしまう現象が「アンダーステア」。それとは逆に、フロントはグリップしているのにリヤタイヤがグリップ限界に達し、旋回内側に巻き込むような動きが出るのが「オーバーステア」。アンダーステアの極端な結末はコースアウト、オーバーステアの場合はスピンに至る。

アンセーフリリース

ピット作業終了後、安全を確認せず、ドライバーに「GO」の合図を出してしまうこと。その結果、ピットレーンを走行する他の車両と接触したり、接触しそうになったりした場合に、迷惑をかけたドライバーに対し「アンセーフリリース」の名目でドライブスルーなどのペナルティが科される。

アンチストール

スタート時にエンジンが停止(ストール)するのを防ぐシステム。F1は乗用車のようにスターターモーターを搭載していないので、エンジンを始動するのに外部スターターを利用する必要がある。その場合、メカニックの力を借りなければならない。レーススタート時にエンジンがストールすると一大事(順位を大きく落としてしまうし、危険)なので、クラッチをリリースしてエンジンの動力をトランスミッションに伝える際、エンジンのトルクが十分でなかったり、リリースが急すぎて動力の伝達がうまく行かなかったりした場合、自動的にニュートラル(クラッチを切り離した状態)にして、エンジンがストールするのを防ぐ。

インスタレーションラップ

ハードウェア/ソフトウェア両面で、車載システムが正常に機能しているかどうか確かめるための走行。各フリー走行の最初に行うことが多い。全開で走らず、控え目なペースで1周し、ピットに戻る。

ウイニングラン

優勝したドライバーがチェッカードフラッグを受けた後、パルクフェルメ(車両保管所)に戻るまでの周。レース中、声援を送ってくれた観客に対し、手を振るなどして戻ってくることが多い。

エアロレイク

空力計測装置の一種。空気の圧力差から対気速度を計測するピトー管を格子状に配置した装置で、フリープラクティスやテスト時に、フロントタイヤやリヤタイヤの後方などに設置して走る。得られたデータをCFD(コンピュータによるシミュレーション)や風洞で得られた結果と照らし合わせ、空力の開発精度を高めるのが狙い。

エンジンブロー

エンジンが激しく白煙を噴き上げて壊れること。強度の限界などが原因でピストンやコンロッドなどが壊れ、それらがシリンダー壁を突き破り、冷却水やオイルが一気に蒸発して大量の白煙を発生させる。このような大破壊に至らずピストンに亀裂が入ったような場合は、そこから燃焼ガスやオイルミストが出入りすることで、青白い煙がテールパイプから排出される。

オーバーテイク

追い抜き、または、追い抜くこと。

オープニングラップ

レース開始後の最初の1周。アクシデントや順位の変動が発生することが多い。

カウンターステア

車両の進行方向と逆にステアリングを切ること。オーバーステアが出てスピンモードに陥った際などに行う操作。

クラッシュテスト

F1世界選手権を統括するFIAの安全基準を満たしているかどうか確かめるために行う衝突試験。ノーズを兼ねたフロントクラッシャブルストラクチャーやリヤのクラッシャブルストラクチャーに対して行う。

グリーン(路面)

走行セッション開始直後や雨あがりなど、路面にタイヤラバーが載っておらず、滑りやすい状態を指す。

クリーンエア

前に空気の流れを乱すマシンが走っていない状態を指す。乱れた空気の中では本来の空力性能を発揮できず速く走れない。空気の乱れがないクリーンエアの状態で走ると、本来の空力性能を発揮できる。レースでトップの車が有利なのはこれが理由。

グリップ

タイヤが路面を捉える力のこと。グリップが強いほど、コーナー通過速度は速くなり、ラップタイム短縮につながる。グリップは垂直荷重に比例するので、ダウンフォースを増やすとグリップは高まり、ラップタイム短縮につながる。

クリッピングポイント

コーナリング中に車両が最もコーナーの内側に接近するポイントのこと。クリッピングポイントまでがコーナーの進入、クリッピングポイントを過ぎると、コーナーの立ち上がりとなる。

クルー

チームのスタッフのこと。

コースレコード

各サーキットで記録された、それまでの最速タイム。予選とレースで別々に取り扱われる場合が多い。

コンストラクター

直訳すれば製造業者だが、F1ではシャシー製造業者を指す。F1の場合はチームが独自にシャシーを設計・製造しなければならず、コンストラクターは実質的にチームを指す。

サイド・バイ・サイド

2台の車両が横に並んで競り合っている状態。

シェイクダウン

新車を初めて走行させること。車載機器やシステムがきちんと機能するかどうか確かめる目的で行う。

スーパーライセンス

F1に参戦するドライバーに必要な免許のこと。他カテゴリーの年間ランキングに応じてポイントが配分されており、過去3年間で40ポイントを獲得していることが発給の条件。FIA-F2の年間ランキング1~3位、インディカー・シリーズの年間1位のドライバーには、一気に40ポイントが与えられる。低年齢化に歯止めをかけるため2016年に年齢制限が設けられ、18歳以上でなければ取得できなくなった。同時に、「自動車運転免許を持っていること」「過去2年以上、ジュニアシングルシーターに参戦したこと」などの条件がある。これらの制限が設けられたことにより、マックス・フェルスタッペンのように17歳でF1にステップアップすることは不可能になった。

スターティンググリッド

スタートに向けて車両を止める位置のこと。白線で記してあり、予選順位に従って先頭から順に並ぶ。奇数グリッドと偶数グリッドは互い違いに並んでおり、各グリッドの間隔は8m。前後(たとえばポールポジションと3番手)は16m離れている。

スティント

レース中に走行する「期間」のことで、スタートから最初のタイヤ交換までを「第1スティント」、最初のタイヤ交換から次のタイヤ交換までを「第2スティント」と表現する。

ストーブリーグ

ドライバーの契約更改や移籍、チームとパートナーやスポンサーとの契約が行われる時期のこと。他のプロスポーツが由来なので、選手やチームの契約にまつわる話題は冬に行われることが多く、それゆえ「ストーブ」リーグと呼ばれるが、F1の場合はシーズンが半ばを過ぎた頃、すなわち夏場に活発になる。

スナップ

前触れもなく急に向きを変える動きを指す。「スナップオーバーステア」はよく用いる表現。唐突にリヤが流れ、スピンモードに陥る。

スリップストリーム(トウ)

前を高速で走る車両が壁となるため、背後にぴたりとつけると空気抵抗が少なくなり、先行車に吸い寄せられるように近づく現象。ストレートで追い抜きを仕掛けるのに、この現象を利用する。インディカー・シリーズなどアメリカのレースでは「ドラフティング」と呼ぶ。

セクター

サーキットの「区間」。スタート/フィニッシュラインを基点にセクター1、セクター2、セクター3の3つの区間に分け、区間通過タイムなどの計測に利用する。

ダウンフォース

車両を地面に押さえつける力のこと。空気の圧力差を利用して発生させる。F1マシンは前後ウイングとフロアで主にダウンフォースを発生。ウイングは飛行機の翼を裏返したような形状で、ウイングの上側よりも下側の空気の流れを速くすることでダウンフォース(負圧)を発生させる。フロアの場合は、フロアと路面に挟まれた空間の流速を高めることで発生させる仕組み。F1のコーナーでの速さを生み出す決定的な要素。

ダーティーエア

直訳すれば、汚れた空気。クリーンエアの対義語で、空気の流れが乱れていることを表す。前を走る車両が乱した空気の中を走るので、本来のダウンフォースを発生させることができず、アンダーステアが顔を出すなど挙動が乱れがちになる。

タービュランス

乱気流。ダーティーエアと同種の表現で、車両の通過によって乱れた空気の流れを指す。この中を走ると空力バランスが崩れるので、ハンドリングに悪影響が出る。

ターボラグ

ターボチャージャーの応答遅れのこと。ターボはその機構上、ドライバーがアクセルペダルを踏み込んでからドライバーが要求するトルクを発生させるのに一定の時間を要する。アクセルペダルを踏み込んでから、ドライバーがトルクを体感する『間』がターボラグ。F1では MGU-HやMGU-Kを利用してラグの解消に取り組んでいる。

ダンプ(路面)

湿った路面コンディションのこと。いわゆる『ちょい濡れ』状態。

チームオーダー

チームがドライバーに与える命令のこと。ドライバーの実力勝負ではなく、チームの意向でドライバーの順位を入れ替えたりする。たとえば、チームメイト同士でポジション争いをしており、選手権ランキング上位のドライバーが後方を走っている際、前を走っているドライバーに対し「ポジションを譲れ」と命令を出すなど。かつては禁止されていたが、2011年から合法になった。

ティフォシ

フェラーリの熱狂的なファンのこと。『チフス感染者』が語源で、広く伝染し、熱にうなされる様子からの転意。

テール・トゥ・ノーズ

前を走る車両の後端(テール)に、後ろを走る車両の前端(ノーズ)が接触しそうになるほど接近して走っている状態。

デリゲート

委員あるいは担当に類する意味で、FIAテクニカルデリゲート(技術担当)やFIAメディカルデリゲート(医療担当)のように使う。

テレメトリー

エンジン回転数や車輪速、冷却水温や油温など、時々刻々と計測される車両データを無線通信を用いてピットに送信するシステムのこと。

ドライバビリティ

『運転のしやすさ』のことで、主にパワートレーンの特性について表す。ドライバーが要求したタイミングでトルク感(力)を発生することが重要。ドライバビリティを重視した方が速さに結びつく場合が多く、ピーク性能と同様に重要視されている。日本では『ドラビリ』と略して言ったりする。

トラクション

駆動力のこと。パワーユニットが発生する力を効率良く路面に伝えることが重要。それがうまくいっている様子を『トラクションがいい』、良くないと『トラクションが悪い』などと表現する。

ドラッグ

空気抵抗のこと。原語はdrag。ちなみに薬物を表すドラッグはdrug。

トラフィック

コース上の渋滞のこと。予選アタックを行う際に遅いクルマに邪魔されたり、レースで周回遅れに引っかかったりした際に「トラフィックに引っかかった」などと表現する。

トワイライトレース

夕方にスタート時刻が設定されたレース。レース開始直後は自然光のもとで行われるが、途中で日没を迎え、以後は人工照明のもとで行われる。アブダビGPが典型例で、日没前に決勝レーススタートとなり、その後ナイトレースへと変わっていく。

ハイドロプレーニング

水膜の厚い路面を走行中、タイヤの排水能力が追いつかず、水膜の上にタイヤが載ってしまい(つまり、車両が水に浮いた状態)、タイヤトレッド面が路面と接地していない状態を指す。こうなるとステアリング操作が効かなくなったり、駆動力が伝わらなくなったりし、コントロール不能に陥る。アクアプレーニングとも言う。

バックマーカー

周回遅れの車両、あるいはドライバーのこと。

パワーエフェクト

エンジンの馬力が10馬力上がるとラップタイムがコンマ何秒上がるのかを表す指標。この場合のラップタイムは、テストする機会が多く最大公約数的なコース特性を持つバルセロナ・カタルーニャ・サーキットを基準とするのが一般的。

パワーユニット

2013年まではエンジンが車両を動かす主役だったが、14年からはエンジンに2種類のエネルギー回生システムを組み合わせたパワーユニットが動力源。レギュレーション上、パワーユニット(Power Unit:PU)は以下6つのコンポーネントで構成される。 ICE(エンジン)、TC(ターボチャージャー)、MGU-H(熱エネルギー回生システム)、MGU-K(運動エネルギー回生システム)、ES(エネルギー貯蔵装置)、CE(制御ユニット)だ。1シーズンあたりに使用できる基数に制限があり、19年はICE、TC、MGU-Hが年間3基、ES、CE、MGU-Kが年間2基までに制限。20年は22戦あることもありMGU-Kの使用制限が3基まで緩和されている。

バンピー

路面がスムーズではなく、凹凸が多く荒れた状態。

ピットスタート

スターティンググリッドから正規にスタートせず、ピットレーン出口からスタートすること。規定時間内にスターティンググリッドにつけなかった場合、あるいは規定外の作業を行った場合、また、ペナルティを科された場合にピットレーンスタートとなる。

ファステストラップ

レース中に記録された最速のラップタイム。優勝、ポールポジションとともに公式記録となる。

フォーメイションラップ

レーススタート前に全車がスロー走行でコースを1周すること。この間、ドライバーは車両の機能チェックを行ったり、急ブレーキを踏んでブレーキを適正な温度まで温めたり、蛇行してタイヤ表面を適正な温度まで高めたりする。この間、追い越しは禁止。フォーメイションラップ開始時に発進できなかった場合は、最後尾グリッドに着くか、ピットレーンスタートとなる。

フューエルエフェクト

レース中は周回を重ねるごとに燃料が消費されるため、車重は軽くなる。軽くなったことによるラップタイムの短縮効果分を、10㎏軽くなるごとにコンマ何秒縮まるといった尺度で表現する。

プライベーター

個人オーナーによって運営されるチームのこと。自動車メーカーが主体となって参戦する『ワークス』と対になる表現。2020年の参戦チームでは、レッドブル、マクラーレン、ウイリアムズ、レーシングポイント、アルファタウリ、ハース、アルファロメオがプライベーター。

フロービズ

車体表面の空気の流れを可視化する技術。『Flow Visualization』の略。可視化したいボディ表面に特殊な塗料を塗って走行すると、走行後の塗料の様子から、渦の発生状況や進行方向、剥離点を把握することができる。エアロレイクと同様、フリー走行やテスト時に行われることが多い。

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